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「……ねぇ。もういい加減仲直りしなよ」


希美が、甘ったるい匂いの広がるキッチンの中で、大量の粉をかき混ぜながら諭すように言う。


「…………」


無言で、手もとの粉ふるいをざり、ざりと動かすあたし。


「どうすんの?もう明日バレンタインじゃん?」


……そんなの分かってるけど。



実は、公園で翔琉と言い合って以来、まともに口をきいていない。


朝も、バスを一本ずらされてしまって。


一人で学校に行くと、すでに翔琉が男友達と、楽しそうにやっているという。


その姿を見ても、声をかけることも出来ず。勿論、声をかけられることもなく。


一人、小さくため息をつく。


翔琉と希美はごく普通に話しているから、全体で見るとあたし達がこんな状態なのはあんまり目立っていない……はず。