Prologue
父が墓標に敬礼を捧げている。
 このアラスカの地に悲しく打ち捨てられたこの墓標には年に一度来る。その度に父は墓標に敬礼を捧げるのだ。
「ねえ、この墓標はいったい誰の墓標なのさ。」
 父は明日から戦場に行く。戦場に行く度に父はもう帰ってこないかもしれない。また「まだその時じゃない」と言われるのだろうけど、今聞かなければいけないのだ。
 しかし、父の答えは意外なものだった。
「そうだな、この墓標とお前の名前の話をするのは今しか無いのかもしれん。」
 名前。僕の。
 確かに僕の名前と父の名前はまったく違う。けど、父には色々な名前があるから気にしていなかった。
「それってどういう・・・」
 それからの父の話は魔法のように耳に語りかけてきた。

「いいか、よく聞け
 この墓標は俺の友の墓標。
 お前の名前は俺の友の名。
 俺の殺めた、
 俺の友の名だ。」