「雫、まだ鼻赤いね」

昼休み。

中庭で紗那とお弁当を食べていた。

朝から赤いままの鼻を片手で隠しながら、卵を口に入れた。

「うるひゃい」

紗那はからかうのが好きだから鼻のこと当分言われるだろうなー。

「ぶつかったあの人、なんか人気ある人だったみたいよ?」

人気があるのも無理ない。

だってあんなに優しい声。

それにモデルみたいに整った顔立ち。

あんな人が選ぶ相手ってどんな人なんだろう...

「なに雫、もしかしてあーいうのタイプなの?」

「ち、違うよ!私はどちらかというと真面目で尽くしてくれるタイプのが好きだし!チャラチャラしたのとか、無理だから!」

「じゃあなんでそんな焦ってんの?もしかして図星...」

「ちーがーうー!!!」

さすがにからかいすぎたと思ったのかおわびとか言いながら唐揚げを私の口に入れてきた。

「許す。でも、もうそういうこと言わないでよね」

「はいはい」

どうせまたやられるだろうと思いつつ、お弁当箱を片付けはじめた。

その時だった。

「水野雫先輩...ですよね?」