「なんで侑までいるの?」
「俺も来てくれって言われたんだよ」
午後の授業も終了し、放課後となった。
まっすぐ帰る予定だったが、みやびに招かれ千夏と侑は町の一角に建つ評判のいい甘味処にやってきた。
店自体は知っていたが、みやびの実家だったとは驚きだ。
「おいしそう……」
メニューに書かれた写真を眺めているだけで幸せな気分になる。
思わずくぎづけになっていると、侑に頭を叩かれた。
「アホ。今日は食いにきたんじゃねえんだぞ」
そうだった。
メニューを机に置いて、向かい側に座っているみやびを見据える。
「今日は店やってねえのか?」
「毎週水曜は定休日なんです」
店のとなりの一軒家が実家らしく、定休日は実家で過ごしているという。
はりつめた緊張感が漂っているが、千夏はメニューに載せられていた和菓子のことしか考えられない。
無難な三色団子や、繊細な盛り付けが施されていた白玉あんみつ。
クラスメートのよしみで作ってくれたりはしないだろうか。
「福丸くん」
「お?」
作ってくれなくとも水曜日以外は営業しているのだから、また今度来よう。
「十瀬さんを幸せにしてあげてください」
この頃気温が上がってきたと感じていたところでもあるため、かき氷も捨てがたい。
「……あー、みやび、勘違いだぞ」
「勘違い?」
「なんで俺が千夏なんかと」
「ちょっとなんの話してるの」
侑の失礼な言葉が耳に飛び込み、甘味の世界から帰ってきた。
話は聞いていなかったが、侑の発言は聞き逃せなかった。
「俺とお前が付き合ってるって勘違いしてんだよ、こいつ」
「えー。絶対ないよ」
侑とはもう十年にもなる付き合いだ。
恋愛感情など到底芽生えないし、侑と抱きしめ合いキスをしていることを想像するだけで鳥肌が立つ。
これに関しては互いにそう思っているため言い返したりはしない。
「本当に、付き合ってないんですか……?」
「おうよ」
するとなぜか、みやびの瞳が大きく揺らぎ涙を浮かべた。
本日二度目の泣き顔に、千夏の侑は焦り顔を見合わせる。
「ど、どうしたんだよ。おまえ変なヤツだな。はははっ」
「早坂くんっておもしろいねっ」
無理矢理笑顔を作って必死に慰めるも、みやびの涙が止まる気配はない。
いよいよかける言葉がなくなり困り果てていると、みやびは涙を拭こうともせず、嬉しそうに笑った。
「僕、てっきり十瀬さんと福丸くんは付き合ってるんだと思ってて……。本当によかった……」

