1階にある理事長室から4階にある1-Bの教室の前に来た。

さっきまで静かに歩いていた佐々木先生はそこで立ち止まり、口を開けた。

「じゃあ入ってって言ったら入って来いよ。」

「分かりました。」



それにしても煩い。
学校というものはこんなにも煩いものなのだろうか。

学校に行ったことの無い私たちには'普通の学校'の基準がわからないのだ。


少しすると中から佐々木先生が入って良いと言ってきたので、前にいた瑠衣が最初に白いスライド式のドアを開けて入っていった。

「男かよ」
「おい、女もいるぞ!」
「よっしゃ女子第3号!」

瑠衣に続いて教室に入るとなんとも騒がしい声が飛び交っている。


「名前言って。」

「高橋 美歌です。」

「高橋 瑠衣。」

たったそれだけの自己紹介で拍手が沸き起こった。

「2人とも新しい環境で慣れないだろうから優しく接してやれよー。
ええっと、2人の席は窓側の一番後ろの出っ張ってる席ふたつね。」

「はい。」


出っ張ってる席について疑問に思ったのは一瞬で、窓側の後ろに目をやるとすぐにその疑問は解決された。
勿論机がでこぼこなのではなく、後からそのふたつの席が付け足されたように、一番後ろの列にはそのふたつ以外に机も椅子もなかったのだ。

その指定された席まで歩く途中にもう一度教室内を見回すと、わたしたちの席の目の前や、ほかにもいくつか空席があり、なかなか自由な場所なのだとすぐに理解した。


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