「……俺さ、まだみんなが居た時、この部屋でこんなことになるなんて思ってもみなかった。」


「……でも、」

普段は冷静でクールな大地の声が震えだし、
栞は逸らしていた顔を上げた。

「でも、最初に深沢(みざわ)が死んで思ったんだ。俺達は誰かの遊び道具になっているんじゃないか、って」

「本で読んだことあるんだ。心が荒んだ人間達が楽しそうに遊ぶ子供を部屋に閉じこめて殺し合いをさせるんだ。最後の一人になるまで解放しない。子供の心は純粋だからね。その純粋な心を持った人間はどんな行動力をとるのか、って観察するんだ」

「……っ、なんで、なんでそんなこと!」

「実際にはどうかはわからない。その本ではそれが哲学に結びつくんだ。」

「どういうこと?」

「心の荒んだ大人達にはわからない。純粋な心を持った子供がとる行動をみて、何のために人間が生きているのかを検証するんだ」

「なんで……なんで?それは本の中の話でしょう?」

理不尽な理由で友達を失い、大地の話を聞いて怒りを覚えた栞だが、
大地の中にはもう既に怒りなどなかった。