起き上がったのは二人の男。
記憶上の数時間前より人数が減っている。
花池栞、春木大地(はるきかなた)、山浦嘉夏(やまうらかなつ)。
残り三名。

「……嘉夏、ごめん」

静寂な部屋の中に大地の哀しい声が響く。

「ははっ、わかってるよ。……そういえば春木、よく考えればお前からの願いなんかこれが初めてだよな」

「……ごめん」

「そんな謝るなって。俺はさ、今までしょっちゅう春木にわがまま言ってばっかだったし。一回くらいはお前のわがままに答えなきゃな!」

精一杯明るくしようとする嘉夏の言葉に大地はさらに傷ついた顔をした。

「でもびっくりしたぜ。まさか春木がそんなこと言い出すなんてさ」

大地は俯いたまま何もしゃべる気配がない。
栞もまた二人の会話を聞いているだけだった。