「伊織くん、私、本当に伊織くんのことが好きなの。いつも伊織くんのこと考えて他のことが全く手につかないくらい。
でね…、」
私は伊織くんのものになる、って曖昧な表現を具体的に明らかにしたかった。
前に伊織くんが言っていた、そして私が自爆した、セフレなんて方向の話になっていたら大変だからだ。
…それなのに。
「ぎゃっ!」
「いっ!!!」
伊織くんに近づこうとしたら、何故か足を捻った。
伊織くんが咄嗟に私を支えようとしてくれたのに(今までにはなかった優しさ…!)伊織くんの急所に肘を入れ込んでしまい、一緒に倒れた。
どさり、と音がした。
下には伊織くん。
「命令もなしに僕の上に勝手に乗るなんて、許さないよ。」
「わわわ!ごめんなさい!!」
というかそういう命令されることがあるの?
くるり、と体勢が入れ替わった。
今では私が下だ。
「僕は相当君にハマっちゃったみたいだね。」と困ったように呟いたようだけど、私には届かなかった。
私は伊織くんが心配でしょうがなく、意識は伊織くんの下半身に持っていかれたから。
「伊織くん…あの、肘で…あの、ごめんね、大丈夫?」
「不能になったらどうするの? まあその時は澄音に責任取ってもらおうか。
でも、人の心配よりも自分の心配した方がいいんじゃない?」
にこりと私の上で笑った。
ここで私の名前を呼ぶなんて卑怯だ。


