「そんな小さい身体ではぁはぁしながらついてくるところから既にS心がくすぐられたよね。」
上品な笑顔でそんなこと言わないで…完全にキャラ崩壊です。
「いいよ、君の純粋に僕が好きってやつ、これから証明してよ。」
まあ頑張ってね、と言いながら私のおでこにキスをした。
その笑顔でこれはやばい…!!
即座に顔が赤くなったであろうことはすぐに分かった。なぜなら自分の中で爆発音が聞こえたから。
ちなみに、その場で立ち尽くして余韻に浸っている間に伊織くんの姿は消えていた。
とは言っても伊織くんは私を下僕にしたかっただけのようです。
あれからというものの雑用ばかりさせられる。その上この間なんて…。
朝のHRで担任が半ばキレ気味に言う。
「進路室の鍵が無くなっていて、今までスペアキーでなんとかしていたんだが、勝手に進路室が開けられていた。誰か盗んだ者がいるなら申告しなさい。」
…伊織くんじゃないか。
でも、その後伊織くんは私に鍵を渡して「それじゃ、よろしくね。」と言った。
私が申告しろと!?!?
嫌そうな顔をすると「純粋な好き〜」と呟いてくる。
私はなんとか嘘を混ぜ込み誤魔化しながら鍵を返却した。常日頃から真面目に過ごしていたおかげで注意される程度で済んだけれど。
他にも、購買で即売のプリンを確保しろだの、突然紙飛行機を投げたと思ったら拾って来いだの、(どうやら私が必死こいて息を切らして向かってくるのを見るのが楽しいらしい)、プリントを運べだの…。
これで本当に純粋な好きは証明出来ているのだろうか?
いや、出来ているはずがないだろう!
私はただ利用されているだけ、おもちゃにしか思っていない。それは分かっているのに…。
「はぁ…。」
「森川最近疲れてない?勉強しすぎ?」
うしろの席の真部君が心配そうに声をかけてくれた。
「ううん、むしろ勉強に集中出来ないの…。」伊織くんのせいでね。
「まあ、そういう時もあるよな〜。中途半端にやるよりも、やる時にはやって、たまには息抜きとかした方がいいって。なあ今度映画観に行かね?」
うう…真部くんなんとお優しい…。
でも真部くんも私同様受験生、そんな大切な時間を私のリフレッシュに割かせるわけにはいかないよ…。
「真部くん、本当に優しいね。
すっごく行きたい!」
でも、真部くんの大切な時間を割くのは〜と言う続きの言葉は妨げられた。
…伊織くんによって。


