「・・・・この店のケーキ高いのに・・・・」



呟いてその箱の蓋を閉めると横にあるもう一つの「オマケ」を手にして色々な角度から眺めてしまう。



「・・・・・可愛い」



素直にこぼれた感想と口元の笑み。


造花で出来たそれはコサージュで、絶妙な色身とバランスでまとめられ目を引くそれに心奪われる。



「・・・・・最低な男なのに」



でも、あの男が作り出すこれは美しい。


海里が式で手にしていたブーケも・・・・。


しばらく食い入るようにそれを見つめると、小さく横に首を振っていつもの平穏な時間に戻るようにカウンター横の椅子に座る。


ふわりと香った煙草の匂いに驚いて振り返るけどその姿はなく。


それでも動けば香る匂いに疑問を感じれば、答えはすぐに見つかった。


自分から香るあいつの移り香。


眉根を寄せて舌打ちしたのに手にしていたコサージュを視界にとらえて相殺された。


きっと・・・、明日も何食わぬ顔で来るんでしょ?


顔を見たらすぐに文句を言ってやる。


そう心に決めると椅子に座って読みかけの小説を開いた。