高二の二学期は忙しい。受験態勢の始まった三年生に代わり、行事を全体を取り仕切る。
文化祭や体育祭、修学旅行…。
毎月のようにやって来るイベントの中で、私達が一番楽しみにしてるのが体育祭のリレー。
毎年必ずと言っていい程デットヒートが繰り広げられて、スターが現れる。二学期始まった早々からその予想はスタートしてて、女子は大いに盛り上がってた。

「うちのクラスのイチオシは断然ジョーリよね!」

予想屋の長を務めるルゥちゃんが生徒名簿を眺めた。

「隣のクラスは誰?」
「生徒会長の宮里君辺り 」
「先輩は⁈ 捨て難い人結構いるよ」
「それを言うなら一年生にもいるし!」

妙なまでに盛り上がってるのには意味がある。
そのスターが好きな子に告白するのは、リレーの後だって決まってるから。

「ジョーリがスターになっても面白くないね…」

シャーペンの先で、トントン名前を突きながら長が呟く。
その言葉で皆が一斉に見たのは、教室の端っこで顔突き合わせてる二人。
ジョーリと芽里だ。

「既に彼女がいる人は除いたら?」

予想屋の一人が提案した。

「でもジョーリ君以外の男子って言ったら、うちのクラス他にいないよ」

教室内を見渡す。
どんな基準でスター候補が選ばれてるのかは知らないけど、ジョーリよりも足の速い男子は確かにいない。

「つまんないけど仕方ないか…他のクラスからスターが生まれること期待しよ!」

全学年の各クラスから一人ずつ候補者を選び出し、予想会は終了。後は文化祭や中間考査、体育祭の練習次第で候補を変えてく。


「なんだか楽しそうだったね、キラリ達」

休憩が済んで席に戻って来た芽里に聞かれた。

「何話してたの?」
「ん ?…体育祭のリレーで誰がスターになるかって…」

ちょっと言うのをためらった。
ジョーリがうちのクラスの第一候補なのは明らかだから。

「ああ、だったらうちのクラスはジョーリ君に決まりだね。彼が一番足速いもん!」

(彼…ね。)

決めつけたような言い方。神経逆なでされてるようで、どうにも嫌な気分。
ジョーリとは友達でいいと決めたのは自分なのに、芽里からジョーリの話を聞くたびに気持ちが揺れる。
そんな私の気持ちを知りもしない芽里は、最近やたらと接近してくる。
まるで、ジョーリが自分のものだとアピールするみたいに、言葉の端々に彼を付ける。
それを聞くのは耳障り。でも、無視することもできない。
ズルズルと嫌な気持ちを引きずったまま過ぎてく毎日。
そんな中でジョーリとは、少し距離を置く日々を送ってた……。