風が髪をなで、私は空気を吸いこむ

この学校に通う、最後の春

私は高校3年生になる

「栞~!」

名前を呼ばれて、振り向く

幼なじみの藍がいた

「おはよ、藍」

「おはよ~!今日も部活がんばろー!新入生来てくれるかな?」

「どうだろ?」

私と藍は同じ部活

合唱部

私たち3年生が9人、2年生が10人

決して多くないけど、それなりにまとまっている

でもやっぱり、合唱は人数が多いほうがいい

ちなみに藍が部長で私が副部長

「藍!」

聞き覚えのある声

特徴的なテノール

一瞬で誰か分かった

「裕二くん」

「おはよう、栞。藍も…」

「栞、行こっ!」

「え?」

藍に手を引っ張られる

状況が理解できない

「ケンカでもしたの?」

「彼氏だからって、やっていいこと悪いことあるでしょ!?」