誰よりも



「…も、もしも…」

『もしもしっ!?』


もしもし…を言い終える前に
相手の大きな声に遮られてしまった。

その声が聞こえたのか…
恋人と目が合ってしまった。

わたしは、どうして良いのか分からず
目をそらして、ベランダに出てしまった。


「ひ、久しぶり…」

『久しぶり。
元気だった?』

「元気よ。」

『そっか。なら良かった。』


久しぶりの彼の声。

変わらない落ち着いた声。


そんな声を聞いただけで
涙が出そうになった。