あまりにその行動がいきなり過ぎて、思考が停止しそうになる。


「えっ、ちょ、何するのっ」


背の高い白雪くんは、ひょいひょいとかわすだけで、カバンを返してはくれない。


「さっきだって、机に適当に押し込んだからこうなったんでしょ?」


仮にも人様のカバンを遠慮もせずに、がさがさと漁って何を考えてるのか、全然分からなかった。白雪くんはその中からさっきのテスト用紙を見つけ出して、丁寧にのばす。そして、自分のカバンから一冊の空のファイルを出してテスト用紙をしまった。


「このファイルあげる。だから、もうテスト用紙、忘れたり、なくしたりするなよ」
「いらないし。大きなお世話だから……って、わっ」


白雪くんはクリアファイルを無言で私に押し付けた。


「だからあげるって言ってるのが分からないのか? 感謝しろよバカ」


カッとなって半ば強制的に押し付けられたそれを何も言わずにカバンに入れ、教室を飛び出そうとする。



明日は絶対来ない、そう決めた。



「瀬名サン」



ふいに、呼び止められて、手を掴まれて、振り返ってしまう。彼はかすかに微笑んでいた。




「瀬名サン、またね」





前言撤回……してもいいかも。