「……それから、暗いところもダメになって、メガネも手離せなくなったんです」



全部を話し終えるとちょうどよくチャイムが鳴った。


あぁ…授業始まったな、とぼんやり頭の片隅で考える。



「家族やナルちゃんとはメガネがなくても話せるんですけど……
ダメですね、わたし」



弱くて、という言葉を飲み込んだ。



「恭くんにも、兄さんたちにも、たくさん迷惑かけて、心配かけて……」



ジワリ、と視界が滲む。


昨日ナルちゃんにも言われたから、大丈夫だと思ったのに……


こうやって過去を思い出すだけで、自分がすごく弱くて惨めな気持ちになる。



「ダメだなぁ……」



本当に、弱いな。わたし。



「白崎、」



低い、恭くんの声が静かな教室に響く。



ダメ……切り替えないと。


恭くんに、これ以上迷惑はかけられない。


その一心で顔に力を入れ、ぎこちなく口角を上げる。



「すみません、こんな暗い話。忘れて下さ」


「白崎」


「………」



真っ直ぐ、真っ直ぐ、わたしの心まで見透かすような恭くんの視線。



そらせない、と思った。


そらしてしまえば、恭くんのことを拒絶したみたいに感じて。