「こんな地味なやつの約束なんていいじゃない」
「私たちと行きましょ?」
再び恭くんのもとに伸びた手を、今度は恭くん自身が振り払う。
そしてわたしの手をとった。
え、と思ったのは一瞬で、すぐに恭くんがここから抜け出そうとしたことが分かったので、わたしも逆らわずに手を握り返した。
「しつこいよあんたら。
約束あるって言っただろ。行くぞ」
手を引かれてその場を退散する。
後ろでぐちぐちと何かを言っている声が聞こえたけど、気にせずにわたしはただ恭くんの後ろをついていった。
しばらく歩いて角を右に曲がると、恭くんが口を開いた。
「サンキュ、さっきは助かった」
「あ、いえ。気にしないで下さい」
たまたま通りかかっただけですから、と言うと恭くんは微かに笑った。
「ところで、」
この手はいつまで……?
「あ、わり」
恭くんもわたしの視線で言いたいことが分かったのか、スルリと繋がれていた手がほどかれる。
ゆっくりと歩き始めた恭くんの隣に行くと、何も言われなかったので。
そのままここにいてもいいのかな、と解釈してわたしも歩く。
「恭くんはどうしてあんなところにいたんですか?」
てっきりカインくんと一緒に帰ってると思ったんだけど。
「あぁ、途中までは一緒にいたけどな。
わざわざカインの用事に付き合う義理もないから帰ってきた」
なんでもその用事というのがまたまたお姉さん関係だったらしく。
欲しい服があるから買ってきて〜、というものだったらしい。
またそれが女の子っぽい洋服のお店で。
そこに入るのは嫌だと恭くんは逃げてきたとか。


