二人の会話に首を傾げるわたしに一ノ宮くんが説明してくれる。
「カインのところ、姉が一番強いらしくて。
それでカインは姉にこき使われてる。
今もそのメール」
「……あぁ」
つまりはパシリのメール……
わたしは逆に兄さんを使う方かもしれない。
たまになら使われるけど。
どっちもどっちかな。
「じゃ、ボクは行くところできちゃったから」
また明日学校で、と来た道を走っていく姿に、わたしは手を振った。
こんなことするの久しぶりで、思わず笑みがこぼれる。
「カインくん、優しいんですね」
「姉が強いだけだと思う」
そう、なのかな。
わたしは直接会ったことないからなんとも言えないよね。
「一ノ宮くんはカインくんのお姉さんに会ったことあるんですか?」
「あぁ……まぁ、たまになら」
そうなんですか、と返してわたしは歩みを進めた。
「……なぁ」
「はい?」
目を隣に移すと、予想外に一ノ宮くんの真っ直ぐな視線とあってしまい、ドキッと心臓が跳ねた。
「名前」
「、はい?」
名前が何?
キョトン、としてしまうわたしに一ノ宮くんは微かに笑みをこぼした。
「俺も、恭でいいから」
あぁ、そういうことか、と納得して分かりました、と返す。
「あと敬語もいい」
「え、それは……」
タメ口でもいいって言っているんだろうけど、人との距離が分からないわたしはずっとこれで過ごしてきたわけで。
いきなり言われても困る、というのが率直な感想かもしれない。
「ど、努力します……」
俯いたわたしの上から一ノ宮…恭くんが笑った気配がした。