「だからそばで付きまとっていれば、もっと声が聞けるかと思ったんです」



あれ、言い終わってから気づいたけど、これ、ものすごく不純な理由じゃないか?


引かれる前に怒られるぞ。


その前に軽蔑されてもおかしくない……



「すみません。こんな不純な動機で近づいてしまって……」



でも、諦めるなんてできない。


したくない。



まだ耳に残っている一ノ宮くんの声。


聞いても聞いても、もっと聞きたいって思ってしまう。



こんな気持ちになったのは初めて。



「……もしかして、さっき好きって言ってたのって、」


「? 声のことですけど」


サラリ、とそう言えば二人はお互いに顔を見合わせた。


わたしには分からないことだけど、二人はそれで相手の考えが分かったらしい。


人付き合いとは皆無だったわたしにはできない芸当だ。



「白崎さんは、顔とは言わないんだね」


「顔?あぁ、一ノ宮くんも枢くんも整った顔立ちしてますもんね。

でもわたしが見た目に注目してたら、わたし自身もっとマシな格好してると思いますよ?」



自分で言うことでもないけどさ。


そこはもう気にしてない、というかどうでもいいや。


今更な気もするし。



「あぁ、確かに」


「一理あるよね」



……うん。二人がこう言ってもしょうがない。


分かってはいるけど、いい気分はしない。


自分で言ったことだけど。



ふと時計を見ると、次の授業の予鈴がなるまであと五分。


そろそろ戻った方がいいかもしれない。


ここから教室までは少し離れてるし。


そう言うと二人も同意するように立ち上がった。