「そういえば、庭が綺麗だって旅館の人が言ってたような……」



今なら一人だし、ゆっくり見て回れそう。


う……その前に水分補給しないと倒れそうだ。


記憶を頼りに自動販売機のところに向かうと先客がいて。



「……カイン、くん?」


「あれ、六花ちゃんだ」



甘く、心に染み渡るようなテノールボイス。


間違いない、カインくんの声。



「どうしたの?一人?」


「はい。みんなでお風呂にいたんですけど、のぼせそうだったので、わたしだけ先に上がりました」


「うわあぁ、イリアとかサユとかいろいろ面倒だったでしょ?」



まさかその通りです、なんて言ってもいいものか……


曖昧に笑みを浮かべると、カインくんは大きなため息を溢した。



「あ、でもユスラさんが助けてくれたので大丈夫でしたよ?」


「まともなのはユスラだけか……本当、ごめんね?」



申し訳なさそうなカインくんにわたしは微笑む。



「いいえ、気にしてませんよ。それに、とっても楽しかったです」


「そう言ってくれると助かるよ」