決断の時①




『千鶴はこの世でかけがえのない私の大事な一人娘だ。だからあの子には裕福で絶対幸せになってもらいたいと思っている。』

源一さんは窓の外を見ながら語り始めた。

『私にはまだ君の事が多少わかった位だが、聞くところによるとどうやら千鶴は君に心底惚れているらしい。

だから今のあの子にとっては君が側にいてあげる事が幸せなのは間違いないだろう。』

千鶴・・・

『ここの職場はやりがいがあると思う、だが、はっきり言って毎日が忙しい。

働いてもらうとしたら朝から夜中まで、そしてこのご時世だし給料も裕福と言える程たくさんは出せない。』

俺は黙ったまま話を聞く。

『はっきり言って、この職場に勤めていても千鶴を幸せにはしてあげれないだろう。

悪いがそんな娘を黙って見ている事はできん。』

そう言うと源一さんはこっちに振り返り、

『だから君にはどちらかを選んでもらいたい。


ここで働くか、千鶴と別れるかをね。』