私は小さい頃をあまり覚えていない。
正確に言えば小学生高学年までの記憶が抜けている。
別に忘れてても生活に支障は無いから良いんだけど...
あると言えば周りの友達から
「ねぇねぇレナの好きな人って誰!?」
私はいつも返答に困る。
「やー好きな人とかいないし、出来たこともないよ」
「えっ高校生にもなってまだ恋したこと無いの!?」
来たーこのお決まりの台詞。
そんなに恋って必要なのかよぉぉぉぉぉぉとグラウンドの中心で叫びたいわ!
恋をするとその人を想うだけで胸が痛むらしい。
それは狭心症の疑いがあるよ。と美奈に言ったら笑われた。
「じゃあそのなんちゃら症かも!って思ったらそれは恋の始まりだよ」
なるほど。まぁ健康だから一生無いなって思っていたけれど...



キーンコーンカーンコ-ン
HR始業開始5分前のベルが鳴る。
何やらさっきからクラスが心なしか騒がしい...
「美奈、この騒ぎは一体...?」
前の席にいる茶髪交じりの髪を振り向かせながら美奈は言う。
「あー何かね転校生が来るらしいよ!!しかもカッコイイんだって!!」
「ふ~ん」
「うわっ興味なさそうだね~」
そうはっきり言ってどうでも良い。
たかが転校生ごときに私の日常は変えられないのだ。

「はーい、皆席について~」
まだ初々しい女教師山内が入ってきた。背が小さくて顔も甘いから皆から山Pと呼ばれている。
「今日から3組に新しい仲間が増えます。入ってらっしゃ~い」
「失礼します」そう言って入ってきた男は背が高く目鼻立ちが整っており綺麗な顔だった。すると案の定クラスの女子は
「やばい、めっちゃかっこよくない!?」
「まじ、限りなくタイプに近い!!」
すごいなぁいまどきの女子高生は・・・と感心していたら
「僕の名前は神崎トキです。皆さんよろしくおねがいします」
何てテンプレートなんだろう。しかし名前は何かカッコイイな。
「じゃあ神崎君」席に着いてと発する前に
「あっレナちゃん!!やっと見つけたよ!!」
すると一斉にざわめくクラス。
「えーなになに!?レナ知り合い!?」
思考停止する私。待て待て誰だ。あの男は。まったく身に覚えがないぞ。
「先生、僕レナちゃんの隣に座りたいです」
いやいや既に私の隣には男子が座っておるぞよ!?
「えっでも後ろしか席空いてないし・・・」うろたえる山P
するとその神崎野郎は隣の男子に
「申し訳ないんだけど後ろの席と変わってくれないかなぁ」
「おう!やった俺後ろにいけるわー」
その男を恨んだのは言うまでもない。
そうして隣に座る神崎野郎「レーナちゃん☆僕会えて嬉しいよ」
ちょっと待って。私あなた知りませんと言う前に
「じゃじゃあ授業始めまーす」
1時間目山Pの授業国語が始まった。