「…はあ」
怒る気も失せてくる。
だって、この人本当に悪いと思ってないんだもん。
にっこにこしながらあたしの腕を引いていた。
軽く鼻歌だって口ずさんでいる。
「あ」
急にぴたっと足を止める緋人の顔を覗きこむ。
「ここで何しようか」
…ずっこけそうになるのを必死に止めた。
「…ノープランなわけ?」
「うん、だってこの駅降りたことないし」
「………あたしだってない」
「あそ、じゃ、探検しようか」
「………」
探検。
子供じゃないんですが。
「ねえ、お腹空かない?」
「…平気、朝ご飯食べたし」
「ええ?偉いねえ。
俺、ペコペコだからどっか行こう」
「………」
聞いてない、この人。
私お腹空いてないのに。



