「あ、見てみて。俺と杏奈ちゃんが話してる事に気付いたら彼、こっち睨んでる」
「……」
「面白いから、もっと接近しちゃお」
そう言うと、サトルさんはあたしの頭に手を置いて優しく下へと滑らせていく。
それから、一束掬う様に手に取ると顔を近付けた。
「や、やめてくだ」
「杏奈に触るな!!」
あたしのやめてという言葉を遮ったのは、緋人だった。
ハッとしてそっちを見る。
その場にいた全員の視線があたしとサトルさんに降り注いでいた。
緋人はあたし達の方へズカズカ歩いてくると、サトルさんの手を振り払う。
それから、キッとサトルさんを睨みつけた。
「俺の女なんで、気安く触らないで貰えますか」
「えー?髪の毛触っただけだよ?」
「髪の毛も俺のモノですから」
「うわー。独占欲、半端ないね。
でもさ、今、撮影中ってわかってる?」
それに緋人がハッとした。
すぐに振り返ると、頭を下げる。
「中断してすみません。すぐに戻ります」
それから、再度サトルさんを睨み付けると
「杏奈に近付いたら、まじで許しませんから」
そう言って戻って行った。
緋人はミレに謝っていたが、ミレは軽く笑っていた。



