何で緋人はそんなに普通なんだろう。
仮にもあたしを好きだと言ってくれてるのに。
好きだと言ってないあたしがこんなに緊張してるのに。
緋人の家はあたしの家から10分程歩いた場所にあるマンションだった。
クリーム色した外壁のそこに、緋人は迷わず入って行く。
「俺ん家、ここの一番上」
「そうなんだ」
エレベーターに乗り込み、緋人が七階のボタンを押す。
その間もあたしと緋人の手が離れる事はない。
六階を通過した時、緋人が扉を見つめながらぼそっと呟いた。
「俺、一人暮らしだから」
え?
口をポカンと開けて、緋人を見る。
だけど、すぐに扉が開いてあたしの腕はぐいっと引かれた。
どういう事。一人暮らしって。
じゃあ、絶対誰も邪魔しに来ないって事?
「たっだいま~」
頭が真っ白なあたしを気にも留めずに、緋人が玄関の鍵を開ける。
それから弾んだ声を出した。



