「杏奈が嫌じゃなければ、まじで俺の家とかどうかなって思ったんだけど」
「……何もしないなら」
「はは。本当に用心しすぎ。一応俺彼氏ですよー」
「一応ね」
「まあね」
くくっと喉を鳴らして笑うと、緋人がきゅっとあたしの手を取って繋ぐ。
「じゃ、行こうか」
ニカっと笑って緋人は足を前へと踏み出した。
それにあたしは黙って付いて行く。
「撮影どうだった?」
「んー。別に。普通だった」
「そうなの?」
「うん。緊張とかしなかったし」
「凄いね」
「そう?」
そんな当たり障りのない会話を交わす。
あたしは確実に、歩くにつれて緊張しているけども。
受け入れてしまったが、緋人の家に行くんだ。
二人きり?
あたしの頭の中がそれで埋め尽くされていく。
手に汗まで掻いて来た。ドッドッと心臓の鼓動までもが速く動いている。



