「え、と。うん、彼氏」
あたしは視線を彷徨わせながら、そう答えた。
「こんなカッコいい男の子が杏奈の彼氏!!
今日はお祝いだわ!!」
「お祝いとかやめて…」
「あはは。杏奈の家族、面白いな~」
緋人は呑気に笑ってるし。
こんなに騒ぐとか、恥ずかしいんですけど。
「あの、緋人さん!」
「え。何かな」
いつの間にか、己奈子は緋人の目の前に立っていた。
突然話しかけられて、緋人も吃驚している。
「サイン下さい!いや、写真撮って下さい!」
「え?あ、うん、いいよ。もちろん」
「やったあああ!!明日自慢しようっと!」
「ハイハイ、後で。緋人とあたしは出かけて来るから」
「ええ。待って。いや、写真だけでも」
「だってよ。どうする?杏奈」
肩を竦めながら緋人があたしに視線を寄越す。
あたしははあっと大きく息をつきながら、しょうがないと呟いた。



