「よし。ここまでで大丈夫?」

「うん、ありがとう」

「おう。んじゃ、放課後な」


あたしを校門まで見送ると、緋人は手を振って来た道を戻って行く。
緋人が通り過ぎる度に女の子がちらっと振り返ってるのが見えた。



好みじゃなくたって、あの紅い髪の毛を見たら振り返りたくなるよな。
きっと、あたしも振り返るぐらいはしてた。


カッコいいなー。綺麗な髪ーとか思いながら。


一人になった途端、不安が襲って来たけどどうにか自分を奮い立たせた。
大丈夫。もうあたしは違うんだから。



下駄箱に到着した瞬間、後ろからかかった声。


「杏奈ー!」


肩をビクっとさせながら、あたしはゆっくりと振り向く。
ドクンドクンと心臓が変な音を立てた。


だって、そこで笑ってたのは。


「一緒に教室行こうよ!」



あたしを虐めてた筈の、彩加だったからだ。


後ろには南津子と、香奈。


何を考えてるのか、わからない。
ニコニコ笑顔で、あたしに話しかけてくるこの女の行動が理解出来ない。