『体育祭実行委員に連絡します。
本日委員会がありますので
体育館に集まってください。
繰り返します…』
6時間目終了後のホームルームの最中に
校内アナウンスが響いた。
「うわーマジか。
凛ごめん!待ってて!」
窓際の一番後ろの席から
美来ちゃんは大きな声で言った。
私は美来ちゃんのいる方を向いて
うんと頷いた。
ホームルームが終わり、
美来ちゃんが私のところへやって来た。
「終わったらすぐ戻るね!」
「うん、図書室で待ってるから大丈夫」
じゃあねと手を振り私は図書室へ向かった。
放課後の図書室には
図書委員が2人と先生、生徒が2〜3人ほど居るのだが、
今日は珍しく誰もいない。
受付の所にあるメッセージボードに
“資料室に行ってます”
と書かれていた。
誰もいない図書室は本当に静かで
私は読みかけの本をカバンから取り出し
窓辺の端の席に座った。
2〜3ページほど読んだ時、
男女の話し声がこちらへ近付いてくる気配がした。
「誰かに見られたらどうするの〜?」
「大丈夫だよ、
今日図書室誰もいないみたいだし」
慌てた私はなぜか咄嗟に荷物を抱え
受付の机の下に隠れて息を潜めた。
スタスタと床を歩く足音。
私は気づかれませんようにと
目を閉じて祈った。
「ほら、誰もいないだろ?」
「でも誰か来たらどうすんの?」
「じゃあ鍵掛けちゃおっ。
なら安心でしょ?」
「ん〜それならいいけど…」
男女の会話が続く。
私はずっと目を閉じたまま時が過ぎるのを待っていた。
「じゃ、早く脱いでっ」
男の声に、私は一瞬目を開けてしまった。
脱…?
「…なんかドキドキすんねぇっ」
なぜか女の子も楽しそう…。
あぁ早く此処から抜け出したい…。
♫〜♫〜♫〜
しまった…
美来ちゃんのメールに気付くように
マナーモード解除してたんだ。
私は慌ててカバンからケータイを取り出して音楽を止めた。
バ…バレた……?
静まりかえる図書室。
カチッカチッと時計の秒針だけが聞こえる。
暫くしてパタパタと走り去る足音がして
私は受付の机の下から出ようと立ち上がろうとした時、
目の前に先ほどの男子生徒と思われる人が、
私の目の前にしゃがみ込み行手を遮った。
この目の前にいる赤い髪の人は
1組の神崎湊(ミナト)くん。
入学式の時から赤い髪で
トレードマークみたいになっている。
話したことはないけど
見た感じ私の苦手なタイプ。
「君さぁ、どーしてくれんの?」
俗に言うヤンキー座りをし、
右手で頬杖をついて冷たい眼で私を見下ろした。
「…えっと……」
こーゆーときって
カツアゲされるのかな?
それともボコボコにされちゃうのかな?
どうしよう…恐いよ……
「せっかく捕まえた獲物、
逃げちゃったじゃん。
どー責任取ってくれんの?」
「獲……」
獲物…?
そうか、
恋愛とは狩りみたいなものなのか。
…な訳ないよねっ!!
今度こそ殺られる!!!
私は覚悟を決めてぎゅっと目を閉じる。
どうぞ煮るなり焼くなりお好きにっ…
「………へ?」
私の受けた衝撃は
殴られたものでも
蹴られたものでもなく
それはとてもとても優しい
唇へのキスでした。
