私は、段ボール箱を潰しておこうと、フタを開けた。
「…なんだ、これ?」
そこには、白い封筒に入れられた、一通の手紙がひっそりと構えていた。
手に取り、裏を見てみる。
『斜囲原 影一』
……一瞬、全て止まった。
呼吸すら止まった。
動くことが出来なかった。
その手紙が、行方不明になったはずのお父さんからだったから。
なぜ?どうして?どうやって?
何でお父さんから手紙が?
そんな疑問と共に、私は息を潜めて、封をあけた。
そこには、便箋2枚に、しかも直筆でたくさんの文字が詰められていた。
動揺を隠せないまま、何か覚悟を決めて、
手紙を読んだ。
『 斜囲原 理亜 様へ
理亜、元気か?
大きくなっただろうなぁ。見たかった。
もう、そっちじゃ、行方不明ってなってるよな。
お父さんな、実は、ゲーム研究者だったんだ。
って、言われても、わからないよな。
目的は、人がゲームの中に入って遊ぶことが出来るカセットを作ること。
ちょっとぐだらない事だったけど、男女5人、合計10人で、チームとしてやっていたお父さん達は、毎日真剣に取り組んでいた。
そして、ついに完成させたんだ。
人が中に入って遊ぶことのできるカセットを。
それが、理亜の所に届いたカセットだ。
でも、カセットを完成させた時。
人間界とゲーム界の間に、空間の割れ目が出来てしまった。
お父さん達は、全員その空間の割れ目に吸い込まれて、運悪く、ゲーム界に飛ばされてしまったんだ。
お父さんは、行方不明になったけど、まだ死んだわけではない。
ゲーム界でだが、まだ生きている。
ただ、それを、誰かに伝えておきたかっただけだ。
最後に、一度で良いから、理亜に会いたかったなぁ。
いつまでも元気でね。理亜。
斜囲原 影一 』


