魔法の国の少女


…私。今思ってみれば、お父さんの顔、知らないんだ。

それなのに、お父さんに会いたいって。

お父さんの顔は知らない。

でもお父さんに会いたい。

いやだな、私ったら。

いまさら、そんなことに気がつくなんて。

絶対にお父さんに会ってやる。

そう言って、こっちの世界に来たけど、一体どうやって?

どうやってお父さんに会おうとしていたんだろう。

自分のバカさにはつくづく泣かされる。

このままお父さんに会うこともできず、人間界に帰ることになったら、今まで私がやってきた事は、全て無駄になる。

でも、私がいけないんだよね。

何の計画も無しに、願望だけでゲーム界に来たんだもん。

…でも、さすがにキツいなぁ。

せめて、あの夢の続きを見ることが出来たら…。

ねぇ。お父さん。

私、お父さんの顔が知りたいよ。


その時だった。

「…ガラガラ。」

私の病室のドアが開いた。

そこには、荷物をかかえたセイラさんがいた。

「もう退院して良いですよ、だそうよ。準備は出来た?」

「あ、うん。出来たよ。」

「それじゃ、行きましょ。忘れ物ないね?」

そして私は、セイラさんについていき、家に着いた。

とにかく部屋に行って、荷物の片付けをする。

さっき考えていたお父さんのことについて、私はひどく落ち込んでいた。

まるで、長年つるされ続けたてるてる坊主のように、うつむいたまま。

そして、私はゆっくりと足を引きずるように歩いてリビングに行った。

カルマとパラリンとセイラさんがくつろいでいた。

私はため息と同時に、くつろぐなかに座った。

「シャリア、どうかしたの?」

声をかけてくれたのはパラリンだった。

「えっ?」

「何かシャリア、さっきから元気ないからよ。まだ体調悪いのか?それとも、他に何か…。」

「何にもないよ。」

私はついムキになり、即答してしまった。

「そ、そっか。」

…パラリンに悪い事をした。

私の事を心配して言ってくれていたのに。

どうして私は追い詰められるとこうなんだろう。

どうして自分の事しか考えられないんだろう。

人間として、最低だ。


その時だった。

「バンッ!」

ドアを激しく開ける音がした。

そこにはアルマがいた。

呼吸は荒く、ひどく焦っている。

「ど、どうしたの?」

私は思わず問いかけた。

すると、震えた声でアルマは答えた。

「皆、頼む。一緒に来てくれ。クリスタが大変なんだ!」

この答えは、私自信をも、震え上がらせた。