その時だった。
「…ガラガラ。」
また、病室のドアが開いた。
私たちは、自然とドアの方に顔を向けた。
「シャドウ先生。」
キュリが名前を呼んだ。
そこには、一人の男の人がいた。
どうやらその人は、シャドウ先生と言うそうだ。
後から聞いたことによると、クリスタル病院の医院長なのだそうだ。
その人が、こちらへと歩いてきた。
そして、セイラさんに言った。
「だいぶ体調も良さそうですし、今日の夕方には退院できますよ。」
「あ、本当ですか。ありがとうございます。」
すると、その男の人は、私の方を向いた。
「えっと、シャリアさん…だっけ?あなたも、体調良さそうですし、夕方には退院…」
途中まで言いかけて、フリーズしている。
え、ど、どうしたの。
シャドウさんは、まるで何かに驚いているかのように、動けずにいる。
「…っ!」
その時だった。
どこかに吸い込まれるような感覚に襲われる。
クラっとして、倒れそうになったその時。
どこかの家にたどり着いた。
…違う。ここは私の家だ。
そして、目の前には、まだ赤ちゃんの時の私がいた。
これは昔の記憶を思い出しているものなど、私は悟った。
目の前にいる私は、誰かに高い高いをしてもらっている。
どうやら男性のようだ。
すると、まだ言葉を覚えたばかりの私が何かを言っていた。
「ぱぱぁ。ぱぱぁ。」
…それは確かに、その男性に対して言っているものだった。
男性の顔は角度的に見えなかったため、私は顔をのぞこうと動いた。


