「理亜ぁー。ゴミのチェックするわよ。入るわねー。」
朝、1階からお母さんの大きな声がした。
「OK!もうゴミは無いと思うけどね。」
と、軽く『もう見なくても平気だよ』という気持ちが混ざったような返事をした。
「んじゃ、入るわねー。」
と、階段を上がり、私の気持ちに全く気づいていない、堂々とした姿で、部屋のドアを開けた。
そして、お母さんの長ーいゴミのチェックが始まった。
「これ、いるの?」
と、私の好きな男性アイドルが写った雑誌の切れ端をつまみ取って言った。
「いるいるっ。これを捨てたら一生お母さんをうらむよ!」
と、手を差し出し、私は言った。
そう。一生うらむ。
だってこの写真は、この男性アイドルが、今まで私が見てきた中で、一番カッコ良く写ってる写真なんだから。
これを私が居ないうちに捨てられたりなんかしたら、半日位は部屋に引きこもるだろう。
それくらい大切なのだ。
こういう時、面倒だけれど、やっぱり部屋にいて良かったと実感する。
そして、お母さんは、机の上に並べてある物も右から左、すみからすみまで、くまなく見てチェックする。
そして、最後にベットの下。
「これはどう見てもいらないでしょ?」
と、その右手に捕まれていたのは、あのゲームのカセットが入っていた段ボール箱だ。
「あー。要らない要らない。いつの間にベットの下なんかに。」
私は手のひらで口を叩きながら、大あくびをして言った。
その時、1階の電話が鳴った。
『プルルル、プルルル、プルルル…』
「あら、電話。」
お母さんは急いで階段をかけ降りて行った。
下からお母さんの話す声が聞こえた。
どうやら、古い知り合いからの電話のようで、長くなりそうだ。


