「お、おじいさん!」

若い男性に向かって、僕は声をかけた。
彼は、「おじいさん」と呼ばれるには若いのだけれど、すぐ振り向き、僕を見つけると微笑んだ。
「石は、気に入ってくれたかな?」

僕は、黙って石を差し出した。

「これ、受け取れません。返します。…ごめんなさい」
「どうして、受け取れないのかな?」

…え、どうしてって言われても、困るんだけど……
言いようのない感情から、持っていたく、ないんだ。
怖い、から、なのかな…?

僕は、黙ったまま、彼にその宝石を渡した。
彼は微笑んだまま軽くため息をつき、手の上の宝石をじっと眺めた。

「ではやはり、これは消すしかないか…。
もう、疲れたしな…」
そう呟く。