まさか、そんなことがあり得るわけがない。
そう思い無難にほっぺをつねってみるけど、素晴らしく痛い。
イスに座って、梅干しを食べると、めちゃくちゃすっぱい。
ふと冷蔵庫に目を向けると、去年壊れたはずのそれが、堂々と立っていた。
私は何も言わずに立ち上がると、自分の部屋に向かって階段を駆け上がった。
後ろからお母さんたちの声が聞こえたけど、そんなのは無視。
嘘だ。あり得ない。これは夢だ。
そう思いつつも、部屋に入って鏡を見ると、"今"とは違う私がいた。
卒業してから茶色に染めて胸下まであるはずの髪が、黒くて肩につく程度。
両耳に空けたピアス穴は綺麗に塞がっている。というより空けた跡がない。
部屋を見渡すと、カーテンや布団の色が懐かしかった。もちろん目覚まし時計も。
何より、壁にかかっている、真新しい制服。
紺のブレザーに灰色のスカート、そして赤いリボン。
この制服が着たくて着たくて、高校受験の時必死に勉強していたのを思い出した。
それに触れると、新品特有のかたさがあった。
私は、確信した。
ずっとずっと、願ってきたけど。
まさか、叶うなんて……
私、過去に戻ってきたんだ。

