「美夜子?どした?」
「ん、や、なんでもないよ!」
何も言わない私を不思議に思ったのか、芽衣は私の顔を覗き込んだ。
泣いてないよね、私。
両手でほっぺをぺちぺちと叩くけど、手が濡れる感触はない。
涙が出てもおかしくないくらい、好きという感情が溢れ出た。
「やー、藤咲くんかっこいいね。八城勝てんの?」
「わからん。…いや!わかる!勝てる!俺は勝つ!」
「何それ!」
「かっこよさではこんくらいは負けるけど」
こんくらいと言って八城は、人差し指と親指で2センチくらいの幅を表した。
「少なくともその1000倍は負けてると思う」
「辛辣すぎるわ!」
八城のおかげで平常心に戻る私。
芽衣も、私から八城へと視線を移していた。
はー心臓が痛い。
もう、キュンなんて通り越して、胸がギュンってなったわ。
ギュン?ドン?なんかもうよくわかんないけど、鈍器で殴られたような痛み。
まあ実際そんなもんで殴られたら死んじゃうけどさ…。
胸の真ん中を摩りながら、もう一度コートに目を移した。
あ……
目が、合ったのがわかった。
「っ、藤咲くん、すごい!」
少し距離はあったけど、咄嗟にそう声を上げると、純平くんは照れ臭そうに右手を挙げた。ひらひらと振って。
え、なに、なになになに。
えっ!!!!やばっ何今の!!!!
すでに純平くんはボールだけを追っていたけど、私は動き回る純平くんから、相変わらず目が離せなくて。
はあ、とため息が勝手に漏れた。
また好きになってしまだたのが自分でも手に取るようにわかる。
ずるい。あんなのはずるすぎやしないか。

