体育館にはたくさん人がいるのに、純平くんにしか目が行かない。
隣のコートでも同じようにバスケの試合をしていて、多分上の学年の試合。なになに先輩かっこいい!なんて声が聞こえてくる。
でも、それでも私は、純平くんだけで。
「純平っ!」
ゴール前までボールを運んだ黒のTシャツを着た男子が、離れたところにいた純平くんにボールを渡した。
純平くんが立っているのは、スリーポイントラインよりも外。
本人は来ると思っていなかったのか少し驚いていて、だけど完全にノーマークで。
その両手にボールが届いた瞬間、彼の動きがスローモーションに見えた。
軽く膝を曲げたと思うと、すぐに両足は床から離れていて。
長い腕を頭の上で、まるでお手本かのように綺麗に曲げた瞬間、ボールは純平くんの両手から飛んで行った。
みんなが、彼を見ていた。
コートの中の男子も、周りにいる女子も、両隣にいる八城も芽衣も。
純平くんだけを、見ていた。
「よし」
不思議なくらい、純平くんのその声だけが耳に入った。
と、同時にパサッとボールがネットをくぐる音。
「ーーっ純平ナイスッ!」
菊池の言葉をきっかけに、黒のTシャツは純平くんに集まった。
「すげー!」
「お前あそこから入れるかふつー!?」
「イケメンすぎんだろっ!!」
まだ試合中だっていうのに、みんな嬉しそうに純平くんを囲む。
純平くんも、その輪の真ん中で、すごく楽しそうに笑っている。
「え、すごー…」
「だろ!?認めたくないけど、あいつは確かにかっこいいんだよ!」
呆然としている芽衣と、興奮しながら立ち上がった八城。
私はというと、視界に純平くんを映したまま、動くことすら出来なかった。
かっこいいことなんか知っていた。
純平くんのバスケが、綺麗なことなんて知っていた。
このシュートが決まることすら、知っていた。
それなのに。どうしてこんなに。
どうして、また好きになるんだろう。
「あの人かっこいいね!B組の…何ていう人?」
「藤咲くんだよ!入学して最初の頃、有名だったじゃん!」
私達から少し離れたところにいた、黄色のTシャツを着た2人の女の子。
そんな大きい声で話してたら、他の人にも聞こえるだろうに、お構いなしに純平くんがかっこいいと騒いでいる。
当たり前じゃん。
だって純平くんだよ。
好きで好きで好きで、胸が苦しい。

