教室の前でなんとなく立ったままでいると、B組から純平くんが出てきたのが見えた。
ただそれだけのことなのに、全身の細胞が大喜びで騒ぎ出す。
カッカッと熱くなる顔が、どれだけ純平くんが好きかを示していた。
純平くんは一人で、こっちに向かって歩き出していた。
別に私のもとに、とかじゃないけど、なぜかあたふたと焦ってしまう。
どんどん近づいてくる純平くんが、何もしていなくてもたまらなくかっこよくて。
廊下にいるどんな男子よりも素敵で、輝いて見える。
私は、あの人が好きだ。
他の誰とも比べようがないくらい、大好きで仕方ない。
胸が、苦しかった。
「あ、藤咲くんだ」
「おー」
何を話すわけでもなく、ただ手を振り合うだけ。
純平くんはすぐに私の横を過ぎ去った。
甘いのに爽やかな匂いを残して。
……匂いって、ずるいなあ。
こんなにこんなに好きだけど、純平くんが好きなのはもちろん私ではない。
純平くんは、どんな風に彼女の名前を呼ぶんだろう。
どんな風に彼女に触れるんだろう。
どんな風に、彼女のことを見つめるんだろう。
「やっぱ辛いなあ…」
話しかけるのはいつも私。
きっと私が話しかけるまで純平くんは私に気づいていない。
目が合ったって、純平くんの目には私じゃない誰かだけが映っているんだ。
……もっと、仲良くなりたい。
友達でいいから、もっと。
話せる回数が増えるたび、私の欲は大きくなって、気づいたら自分でも抑えられないくらいになってる。
もっともっと、って。
その想いを胸に隠したまま、B組に戻る純平くんのことは待たずに、自分の教室に入った。

