「ちょっと話しかけてくるね」
「うんっ、いってらっしゃい」
立ち上がる私。
目が覚めてから今まで、ほとんど過去と同じだったけれど、
もうここからは違う。
傷つくのは同じなんだから、わかってるんだから、だったら思い切りぶつかりたい。
ウジウジ逃げるのはもう嫌なんだ。
どうせ思い出にするなら、後悔ばかりよりいい思い出にしたいから。
純平くんにとっても、いい思い出になりたいから。
歴史、変われっ!
「ねえ、もしかして菊池くん?」
3人の会話を割るように話しかけた。
一気に3つの視線が私に向かう。
純平くんに見られてることにたまらなくドキドキした。
…そっちを見ることは出来なかったけど。
「…ああ!藤澤だっけ?」
「そう!塾同じだったよねー」
「そだなー。お前志望校ここだったのかよ」
私、塾の時こいつのことなんて呼んでたっけ?
菊池くんと呼んでおいて、その違和感に若干寒気がした。
「ごめんね、会話止めちゃって」
「いいよいいよ。俺八城一成。藤澤さんの隣だよ」
そうだった。
八城に背を向ける形で芽衣の方を向いてたから忘れてたけど、隣の席でそこそこ話す仲だった。
細身の長身で、黒縁メガネをかけていて。
だけどなんだかチャラく見えて、そこまで関わりはなかったんだよね。
実はいい奴ってことは、しばらくして気づくんだけど。
「菊池は何組なの?」
「B組。こいつも一緒」
と言って指を差したのは、もちろん純平くんで。
ここで初めて、バッチリと目が合った。
どうしよう。
今の私、顔が真っ赤かもしれない。
「藤咲純平ってゆーんだよ。イケメンだろ?」
菊池が冗談っぽい口調で言った。
だけど、純平くんがかっこいいのは冗談ではなく紛れもない事実で。
私はなんて返したらいいのかわからなくて言葉に詰まった。
「菊池、そういうのいーよ」
純平くんが、喋った…!
少し恥ずかしそうにハニカム姿もかわいくて、いちいち反応してしまう。
とりあえず何か返事をしようと考えた結果。
「えとっ、菊池よりかっこいいよ!」
言ってからすぐに後悔した。
何を言ってるんだ、と。
どうして純平くんの前だといつも通り振る舞えないんだろう、と。
「ハハハハッ!藤澤さん言うね〜」
「まあ純平には負けるが八城には勝てるな」
「いや俺もお前には勝つわ!」
……あれ、意外とウケた…?
恐る恐る背の高い純平くんを見上げると、同じように笑っていた。
それは多分、2人のやり取りを見てなんだろうけど、それでもホッと安心した。
「アハハッ」
純平くんの笑い声が好きで、胸がキューンと高鳴った。
少し勇気を出して踏み込んだだけで、もうこんなに近くに笑顔があるなんて。
こんなに簡単なことだったのに、なんで過去の私は動けなかったのかな。

