『ハァ、酷い目にあった…』

梓は仲良しの友達である麗と絢と、いつものように下校をしていた。

『クソー、今枝め!』

結局あの後、私は今枝に絞られた。
しかし、あいつはそれだけでは終わらせなかった。
私に対する嫌がらせのオプションの様に、今日の復習と次の予習を次の数学の授業までにやって、提出しなくてはいけなくなってしまった。

そんな、私に幼馴染みの一人の麗は慰める様にポンポンと肩を落とした。

「まあ、梓…頑張れ。
あたし達も一緒に問題解くの手伝うから。」

『麗…』

続いて、もう一人の幼馴染みの絢も私の頭を優しく撫で撫でした。

「そうだよ、梓!うちも応援するから。」

二人の優しさに感動して、私は二人を抱きしめた。

『絢…二人ともありがとう。』

本当に二人が居て良かった思う。
でなけれ、今頃どうなっていたか…正直考えたくない。

「でも、珍しいよね。
梓が怒られるなんて。」

絢がそう言うと麗も。

「あ、絢もそう思った?
あたしもずっとその事を思ってたんだ。この子、意外としっかりしてるからね、意外と。」


『意外とはなんだ、意外とは!しかも、二回言った。』

「まあまあ、梓落ち着きな。
で、何があったんだ。」

梓は未だ納得してはいなかったが。
このままじゃキリが無いと思い。
彼女はさっきの出来事の事を二人に話した。

すると、麗と絢は馬鹿にする様に笑いだした。

「梓、それマジで言ってるの?
なんかのネタとかじゃないの?」

『ネタじゃないよ、本当なんだってば。』

「でも、数学の授業でそんな声聞こえたあたしも気づく筈だよ。ねえ、絢は聞こえた?」

麗の質問に対して絢は首を横に振った。

「うちも聞かなかったよ。」

『そんな…確かに聞こえたのに…』

梓がションボリとすると、絢は梓の手を握りしめた。

「でも、逆に言えばそれって凄くない!きっと、声の主は梓の事を探しているんじゃないかな?」

『私を…探してる?』

「きっとそうだよ!
よく、アニメの夢小説なんかにあるパターンだよそれ!良いなー」

絢はうっとりした顔だが、麗はその逆で不安そうな目をしながら梓の手を握り締めた。

『麗?』

「梓…もし、またその声が聞こえたとしても答えようとしちゃ駄目だよ。」

『え、なんでなの麗?』

私がそう聞くと何故か麗が辛そうな表情で、目を伏せた。

「分かんない…只…。」

『只?』

「梓が居なくなる気がして…あたし。怖いのよ。」


昔から麗は勘が良かった。

始まりはよくある"今日のご飯"。
それから、年を重ねる内に天気予報を見ていないにも関わらず天気を当てたりする様になったのだ。

そんな、麗にはいつも私はこう言うのだ。

『大丈夫だよ。私は居なくなったりしない。だから安心して、ね。」

「本当に?」

『うん、だから大丈夫だよ。』

話が終わると、麗は安心したのだろう。

握っていた手を離し、暴走している絢を止めに行った。

「じゃあ、あたし達は帰り道こっちだから。」

私達はいつもの家に帰る為の別れ道に差し掛かる。

『え、もう別れ道か…』

「早いよねー。じゃあ、梓また明日ね。
寄り道しないで帰りなよ。」

「梓、明日ね。
くれぐれも変な人に付いて行かない様に気をつけなよ」


『お前らは私の保護者か!』

「ははは、じゃあね。」

二人を見送ると私も自分の家に向かって歩き出した。