スケッチブックに描くもの


 美術の時間に先生に呼び出された。あ、やっぱり下心でお願いしたのはまずかったのかな?
 スケッチブックも持ってくるように言われた。ああ、せめて描いてて良かった。スケッチブックが真っ白だったら……どうなることか。


 美術部にはちらほら部員がいた。まだ入って間もない上に私はテニス部にずっと行ってるし他の部員も外に出ている人が多いみたいなんで、ほとんど誰だか知らない状態だ。っていうか、私に気にせず黙々と描いてるし。

「おお、鏡野! 待たせたな」

 ん? 何か怒りモードじゃない?

「スケッチブックは?」
「あ、はい」

 すかさずスケッチブックを差し出す。これしか証明がない。あ、動機の不純には変わりないんだけど。
 先生はスケッチブックをパラパラめくる。ん? ダメ?

「ん。苦労してるな。だけど、上達してる。うん。このまま描いてみたらいいと思うが、どうだ?」
「あ、はい。描いてみたいです」

 涼をと言いたくてこらえる。それにしても最初の頃はランダムに描いてて良かった。後半は涼ばかりだけど顔を書いてないし、ジャージだから誰かはわからない。これからもそうした方がいいかな。動機がバレバレになる。どうやら先生には噂話は伝わってないみたい。

「じゃあ、暑くなってくるから気をつけてな」

「はい。じゃあ、失礼しました」

 と、美術部を後にする。ん? 暑くなるってそんなに長くなるって決定だよね。でも、確かに今のままじゃ作品にはならないもんな。ってことで、いざテニスコートへ。