「私、今傷付いてんの!だからそっとしといてよ…」 「どうせ健太くんに振られたんでしょ?」 「……」 紗香は会社の同期の子で、頼れるお姉さんみたいな存在だ。 「ちょっと顔見せて?」 紗香は下を向いた私の顔を無理矢理上に上げて、 マジマジと見ると、溜め息を吐きながら言った。 「倫子の事だから、健太くんが来たと思って部屋の鍵を開けたんだろうけど…。もし健太くんが来たら、倫子の顔を見て逃げちゃうよ?」 「そんな事ないもん…」 「じゃあ鏡を見てみな?」 私は走って洗面台の鏡を覗きこんだ。