門限ギリギリに家に着いた。
ギリギリでも、守っている。私は自分の部屋に入り、親とは顔を合わせる事はほぼ無かった。


数時間この部屋に居るだけ。
明け方になったら私は家を抜け出す生活を送っていた。
しかし、学校には休むこと無くキチンと通っていた。


珍しく11時すぎ、私に電話があった。
文からだった。
『奈穂子が居なくなった。心当たりある?』


私は『ある。』と一言言うと、迎えに行くから案内して欲しいと言われた。
私は『分かった。』と言って電話を切って着替えた。


母親がその様子を見て、ヒステリックに怒鳴った。
『門限を決めたじゃない!なんで守れないの!』

私は母を睨み歯ぎしりした口でゆっくり言った。
『うるさい。大切な用事なの。ほっといて。』


その母を見る私の目はマトモな眼差しでは無かったのだろう。
母親はたじろき黙ってしまった。


その様子を見た父は一言私に問いた。
『用事が済んだら帰ってくるな?』


私はコクリと頷いた。
すると父も頷いた。


私は外に出て大きな通りまで出て文の来るのを待っていると、車がやって来た。
私は素早く車の助手席に乗ると文に向かって言った。

『多分ビリヤード場に居るかも、文の家の近く。知ってる?』

文は首を左右に振った。
『じゃあ文の家の駅に行って!』


車は夜の光の河に紛れて走り出した。