待ち合わせの日が来た。
特に嬉しくもなく感情も無いまま待ち合わせの場所に行った。


しばらくすると車のクラクションが短く2回鳴って私の横に止まった。


運転席の窓が開いてその人は話しかけてきた。
『井崎 文華さんだよね?』

私はコクリと頷くとその人は笑って言った。

『改めて、渡辺 蒼一郎です。宜しく文ちゃん。』


私は『宜しく。』と答えると渡辺さんは急かすように言った。


『助手席に乗って。』


私は慌てて車の助手席に滑り込むように乗った。
渡辺さんはポンポン話を振ってくる。


学生さんでしょ?
女子高ってどう?
学校楽しい?


私は『はい。』と一言二言返すのに精一杯だった。


行先は海だった。





私は『はい。』『いいえ。』を繰り返した。
車は私の知らない道をドンドン進み知らない街を通り過ぎって進んだ。


『海に行こうか?』その言葉で私は渡辺さんの顔を初めてちゃんと見た。
笑った顔が少し文に似ていた。


この人なら大丈夫かな・・・・・



車はドンドン進む。