それはナーちゃんが珍しく2~3日自宅に居て、私はホッとしながら過ごしていた。

ナーちゃんからの電話でナーちゃんの家のそばの喫茶店で待ち合わせをした。
ナーちゃんと私の家は最寄り駅が一緒で自転車で行ける距離だった。


私はいつも通り先に喫茶店に着き、飲み物を注文して煙草に火を付けて外を眺めていた。
程なくして飲み物が運ばれて来た。

ナーちゃんは時間に来たためしが無い。
別に私はそんな些細な事は気にしない質なので、のんびり構えていたら、予想より早くナーちゃんが店に入って来た。


ガラガラの喫茶店で私の姿を見つけたナーちゃんはテーブルの向かいに座った。
顔色があまり良くない。
病気が出たのかな。私はナーちゃんが自分で言うまで黙っていた。


ナーちゃんは飲み物を注文した。


私の顔をじっと見つめている。
私は不安になった。
その気持ちがナーちゃんに通じたのかは分からないが、タバコに火を付けて一息ついてから、話始めた。


『アタシね、子供堕ろしたの。』


その言葉に私はギョッとしてタバコを落としてしまった。
ナーちゃんが落ちたタバコを拾って灰皿に消しながら、固まっている私に続けて話始めた。


『文には言ったんだ。病院にも付き合って貰ったの。』


沈黙が流れた。


何も知らないウェイトレスがナーちゃんの飲み物と伝票を置いて店の奥に戻って行った。
その間も私は固まったままだった。


ナーちゃんは飲み物を1口飲んで私を見た。


私はやっと我に返りゆっくりと自分で確かめる様にナーちゃんに聞いた。