次に文とバイトが一緒になった時、文はスッと私の耳元で言った。
『ヨリを戻す事にしたよ。』


私は『そっか。』と言葉を言うのが精一杯だった。


仕事はそんな私の心とは裏腹でいつも通り和気あいあいとしていた。
今ちゃんは相変わらず、みんなを笑わせて時間は過ぎて言った。




仕事が終わり通用口に出ると、今ちゃんと文。そして、何時かの女の子が立っていた。
私はキョトンとしていると今ちゃんが明るく言った。
『この子文の彼女で奈穂子ちゃん。』


私はペコリとお辞儀をして『初めまして。文華って言います。ヨロシク。』

女の子はニコリと笑って言った。
『奈穂子だけど、ナーって言われてるの。宜しくね。』


その間、文は私達のやり取りを静かに見つめていた。
何も知らない今ちゃんは明るく私達の肩をポンポン叩いて他愛も無い話を始めた。


ナーちゃんは今ちゃんの話で笑っていた。
その間、私と文はズッと見つめ合っていた。
お互い分かっている。否、分かってしまった。
もう、戻れない事。


夜は更けて、文はバイクの後ろにナーちゃんを乗せて、今ちゃんと走り去った。


私は2台のテイルライトが見えなくなるまでその場に立って見送った。
ナーちゃんからも文と同じ香りがした。


大丈夫、直ぐにこの気持ちはおさまる。
そう言い聞かせながら帰った。