12月下旬手前


今年も早いもので
あと1週間ちょいになってしまった。



「うーんっ!!イチゴめっちゃうまいー!」


「わぁ!肉丸かじりすんのぉ!?」


クラスにはこんな声が飛び交う


今日は今年最後の登校日


忘年会とクリスマスと
レポートお疲れ様会が
合体したパーティーが
開かれていた。



「みんなかなり盛り上がってるねぇ。」


「レポートでかなり追い込んでたし、
今年はさ、センターとか一般を受ける人が少ないから
みんなはっちゃけ具合が半端ないしね。」


今年は2/3が進学、残りはスクールとかバイト先にそのまま就職とか。
あと両親の仕事を継ぐパターンとか。


進学組も大半は推薦かAOで内定してるから
今年は森ちゃんもホッとしてるみたい。

まぁまだ4人はセンターと一般で
試験が残ってるけど


「あっ。そういやさ。日向くんは?」


「確か、進学はせずにお父さんの会社に入るとか…」


「日向くんのお父さん。社長さんやったよね?」


「うん。アパレル関係のお店してるし、自社ブランドもあるみたい。

けど、若者向けじゃないからよく知らん」


「そっかぁ。まぁいずれは継がなきゃだろうしね。でも本当は大学行きたかったんじゃないん?」


「多分ね。まぁいろいろ事情はあるんやないかな?」


「ってかさぁ。」


「わっ!真奈!」


「どしたん。真奈。」



「いやさぁ。最近日向くん変わったなぁって思って。」



「あぁ。確かに。昔はあんな笑顔やなかったよね?
もっとむすっとしてたし
みんなと絡むこともなくて…」


…確かに真奈や希衣ちゃんが言うとおり

このクラスが始まった頃とは
別人みたいに
クラスに溶け込んでる


赤崎くんや湖南くん以外の男子とも
うちら以外の女子とも
笑顔で話してる


ちょっと前なら考えられなかったこと。



「葵。なんかしたん?日向くんに。」


「えーっ!あたし?
あたしはなんてしとらんよ?

しいて言えば
日向と話をしたくらい。

でも大した話じゃないし
思いを伝えただけだよ?」



「ふぅん。んまぁ深くは聞かないでおこう。」


「なによそれー。」


「ってか告っちゃいなよ。日向くんのこと。好きなんやろ?」


「…っ!!!」


「あー。葵。図星やなぁ?」


「…っべっ別にぃ?」


「怪しい。」


「まぁまぁ。葵がいつ告白するかも見ものだけど
まずは凪紗の告白やろ?」



「赤崎くんっ!!!」


凪紗の声に
教室が一気に静まり返った。


もちろん赤崎くん以外は
みんな凪紗が告白することを知ってるんだけど。


「…っ!俺っ?」


かなり驚いた表情の赤崎くんは
凪紗に呼ばれて黒板前に立った。



「いよいよやねっ!」


「うん。凪紗ー。ガンバっ!!」


「…」


教室の雰囲気は一変して
緊張感に包まれた。



「…赤崎くんっ!

…大好きです。

赤崎くんと一緒に居た時
本当に居心地よくて
本当に楽しかった。

もっと一緒に居たいし
もっと知りたいっ!
だから……」


「…凪紗ちゃん。」


「…つっ付き合ってください!!」



凪紗の素直でまっすぐな告白に
なぜかあたしもドキドキしてしまった。



…凪紗の緊張感がこっちにも伝わるよぉ。



「…もちろん!俺も大好きです。」


赤崎くんの答えと同時に
緊張感に包まれた教室は
一気に歓喜に沸いた!!



「やったぁ!!!」

「ヒューヒューっ!!!」


「おめでとう!凪紗ー!」

「やんじゃん煌月!!」


「幸せなれよー!!」


教室にはこんな声が飛び交った。


森ちゃんもなんだが嬉しそうに
2人を見つめていた。



…よかった。


凪紗の恋が実って。


勇気を振り絞って告白したんやけん。



凪紗ー!おめでとうっ………!!



「…っ!!」


いきなり手首を掴まれたあたしは

クラスの輪から離れ
一番端の席に連れられた。


「ひなっ!!」


「シーっ!」


「…っ!」


「…よかったよな。凪紗ちゃんと、煌月。」


「…っうん。」


あたしはすぐ隣に日向がいる状況に
若干困惑。

でも周りはみんな2人に視線が向けられていて
あたしたちには気づいていない。


「…俺さ。葵にこの前言われて気づいたわ。もっと素直に生きていいってね。

悲観に考えすぎてた。

もっと自分に正直に生きるよ。」


「…日向。うんっ!」


「…でさ。葵。」


「…ん?」


「…今からでも遅くはないよな?」


「…えっ。なにが?」


「…あの約束。今から叶える努力をしても。破ったことにはなんねぇよな?」


「…っうん!もちろん!!」


「…ったく。泣くなって。」


「…っだってー。嬉しいんだもん。

ずーっと待ってたから。」


「…っんじゃあ大人の約束な?」


「…っ////!!!」


突然ゆっくりと塞がれた唇



周りのみんなの歓喜は
今も凪紗と赤崎くんに向けられている




誰にも気づかれてない
秘密の…っ



「…っ!」


「…約束な?」


「…はい。」


…待ちに待った
日向の笑顔が
あたしに向けられること。

作り笑いじゃない

心からの素直な笑顔



待ってたよ?

日向が帰ってくること


そして
…やっぱりあたしは
日向のことが…




…大好きです。





「…よし。あの輪に混ざるか。」


「うんっ!!」



…心の中に広がった幸せ。


それはあたしの気持ちを明るくしてくれた。



日向に気持ちが通じたことだけでも嬉しかったのに。




教室には2つの幸せな雰囲気に包まれたんだ。




…少し早い


クリスマスプレゼントっ!!