〜日向side〜
「…」
「…」
なんか超気まずい雰囲気。
「…なんでお前がここに居んだよ。」
「…あっいや。その。
花凛さんに連れられて…
…おしゃべりしたいからって」
…あの奴。
何してくれんだよ。
「ったく。
…なに聞いた。花凛から。」
「…っ。
家庭環境と…病気のこと。
日向が変わっちゃったキッカケ…」
「…余計なことを。」
「ごめんっ!
あたしが日向の過去を知りたくて
花凛さんについて行ったから…」
「…」
「…あたしの過去の話。聞いてくれる?」
「…あぁ。」
葵は俺の過去を知りたがってた。
同じように
俺だって葵の過去を知りたい。
…ってこの気持ちは
「あたしもね。
一時期
人は大嫌いだったし
信じれなかった時があるんよ。
怖かったんだ。
1人になることが
いまでも恐怖心は拭えてないけど」
苦笑いの葵は
俺の表情を伺いながらの
また話し始めた。
「…日向がいなくなって
あたしはさみしかった。
でもそれが原因やない。
その後の中学で起きたことが原因なんだ。
中学に上がって
3つの小学校が集まって
幼稚園の頃の知り合いと再会して
友達も男女関係なく
たくさんできたし
最初は楽しい日々を過ごしてた。
けどいつしかあたしの周りはざわつき始めたんだ。
…いわゆる嫌がらせ?いじめだよね。
冷やかしっていうか…
その頃のあたしは
男子にもてはやされてた。
大人しくて真面目で…って
ラブレターが靴箱に入ってたりとか。」
…葵が
…いじめに?
「中1の終わり頃になると
男子までおかしくなって
教室に入ったら
男子の様子が変で
何かあったのかな?くらい思ってたらさ
いつの間にか
机の周りにはルーズリーフの切れ端ばっかり
あたしは1つずつ拾って捨てて
でも1つだけ”好きです”って。
誰かの告白だったのか
冷やかしかわからないけど
なんかショックだった。
日向からの好きよりも
冷め切ってたから。」
「…葵」
「…中2になったら
仲良かった女の子たちも離れていって
地味な嫌がらせは続いた。
調子乗ってるって
陰口はすごかった。
来夢も必死に止めてくれたけど
全くダメだった。
そしてあたしは
友達に裏切られて
一人になったんだ。
止めに入ってくれた時以来
来夢もクラスが離れてたこともあって
学校で絡むことはなくなった。
そんな時、支えだったのは
日向を含めた幼馴染の存在。
そして受験して他の中学に入った美香と
Aチームで新体操を続けられたこと。
学校の外で
来夢と美香が支えてくれてた。
そして思い出の中にある日向は
心を落ち着かせてくれてた。
これでなんとか
不登校にはならずに
中学は卒業できたんだ。
だから
正直今中学の校舎見ても
楽しかった思い出なんてない。
むしろ辛かった思い出しかないから。
そして環境を変えるために
慣れない電車通学も承知で
都会の高校にしたの。
今の高校であたしは
新しい大切なものに出会えたし
初めて学校が楽しいって思えた。」
「…お前もそれなりに苦労してんだな。」
「…日向ほどじゃない。
でもさ
空白の5年半に
大切な人から裏切られて
悲しい思いをしたことは
同じ経験をしてるんだね。」
「…あぁ。」
俺は言葉に詰まった。
葵も同じように
大切な人を失ったんだ。
物理的じゃない
気持ちという
精神的な大切なものを
「…っ日向!あたしは!」
「もう。いいだろ?
お前の過去も知った。
同じような思いもした。
これでおしまいだ。
もうこの話は無し
これ以上踏み込むつもりもねぇから
お前も踏みこんでくんな。」
「…」
葵は黙り込んで下を向いた。
…葵の辛さもわかった上で
もう掘り下げるつもりはないから
…俺までしんどくなる
もう、、、限界なんだよ。
「もう…7時過ぎたし
今日は帰れ。
明日お前バイトなんやろ?」
「…うん。なんかごめんね。…」
「…あぁ。。。
花凛ー。こいつ送ってやって。」
「はぁい。」
「本当に…今日はごめんね。…なんか。」
「…」
俺は黙ったまま窓の外を眺めた。
ーー…ガチャ
「んじゃあ葵ちゃん。送るね。」
「またね。日向。」
そう言って
花凛に連れられて
葵は部屋を出て行った
