「…そっか。やっぱ日向くんに。」


「え?」


「葵がずっと日向くんが好きなことくらい、あたしたちは知ってるよ?
…でも葵はただ仲良くなりたいだけだってはぐらかすし。」


「バレてたんだ。」



「当たり前よ。
遠回りして葵は気づいたんだよ。
自分の気持ちに。
あとはさ、後悔しない様に過ごすだけ。

…想いはちゃんと
言葉で伝えないとだよね。」




「…わかってる。

つたえなきゃいけんことは。」


…どんな返事が返ってくるかなんてわかんない。


けど
どんな結末を迎えようと
あたしは後悔しないよ。


…大丈夫だから。



「そうだよ。…まぁあたしも出来てないけどね。」


「…凪紗も?」



「うん。前からさぁ。赤崎くんが好きなの。」


…えっ凪紗が赤崎くんを?
あたしはびっくりして
凪紗を見つめた。



「本当よー。
まぁ赤崎くんがあたしじゃなくて
葵が好きだってこともわかってたから。

何にも言わなかったけど。
このまま卒業なんて、
後悔しそうだし。

葵が断ったことで
チャンスが生まれたから。」


「…凪紗。そんなこと思ってたなら。」


…言ってくれたらあたしは
すぐに身を引いたよ。


こんなにウジウジ悩むこともなかった。





「言うと、葵の気持ちの邪魔するかなって思って。」


…凪紗はいつもそうだ。


あたしたちのことを
常に考えてくれてる。


見守ってくれてる


なんか1歩上を行ってるような気がするんよね。



でもそれを悟られないようにしてる
演技力はさすがだなぁ。




…あたしは凪紗に
何もかも見透かされてるのかな…?




「…ありがとう。凪紗。

凪紗には敵わないな。


….お互いの恋がうまくいくといいね!」




「もちろん。後悔しないように、残りの高校生活は楽しまないと!」



そんな会話をしてるうちに
学校についたあたしたちは
エレベーターで教室に向かった。




「相変わらず、日向くんは突っ伏してダルそうにしてるね。」


「んまぁ。朝早いだろうし。眠いんやない?」


あたしはとりあえず
日向に近づいた。


「っおっはよー!日向!」

「ってぇっ!んだよ。」


少し背中を叩くと
むせながら起き上がり
あたしを睨みつけるように見つめてきた。


「わぁ。怖いー。」


「…ったく。お前かよ。…からかってるつもりか?」


「いやいや。朝のご挨拶をと!」


「…ふん。勝手にしろ。」


あっち行けと言わんばかりに
手を振る日向。


…やっぱ。あたしの検討ハズレかな?



「…わかったよ。」


そうつぶやくと
静かに自分の席に座った。