小崎のことが好きだからといって、私はどうもしない。どうしたところで、変わるとも思わない。
 今さら変わったところで、私たちはもうすぐ卒業してしまうのだから。

 こうしていられるだけでいい。
 それだけで、いい。

 枯れ葉が足元にとんできた。かさり、と音をたてて足裏へと姿を隠す。まるで、私みたいだ。いろんなものを隠すのに必死になっている。
 石原、と呼ばれて私は顔をあげた。



「あいつも、寂しいからっていっていた」



 私は、小崎の声を拾うように耳を傾けた。聞き逃さないように。でも聞きたくなくて。聞かなきゃと思って。
 そんな葛藤が私の中にあった。



「意味わかんねぇよな」
「男と女は違うんですよー」
「おいおい」



 小崎には彼女がいた。私はその人のことを知っている。真帆だ。小崎に告白して、付き合って。けど最近別れたことも知っている。真帆は何をのぞんでいたんだろう。小崎は、寂しい人なんかじゃない。寂しい人、なんかじゃ。

 沈黙がつづいた。



 歩道を並んで歩いているから、いずれバス停についてしまう。私はそこからバスに乗らなくてはならない。彼は徒歩だから、そこで別れることになる。


 ずっと続けばいい、だなんて思うのは私の勝手で。

 この時間がずっと続けば、小崎が真帆と別れたというものまで続くような気がした。やっぱり進まなくてはならない。