「あっという間に冬だよな」
肩が寒さによってやや上がっている小崎がそう洩らした。鞄は教科書の類いで膨らみ、かつ重そうである。
一匹狼な小崎はいつもぼんやりとしていて、大人だった。窓側で頬杖をついている横顔が私は密かに好きだった。いいや、横顔だけじゃない。
私は小崎が好きだ。
「もう冬の匂いだもんね」
「冬の匂い?」
「何というか…うん」
「あー、何となくわかるぜ、それ」
普段、授業早く終わらないかなとか、そういうのを思うけれど、いざ終わりが近づくと寂しく思う。
いろんなことがこうやって終わっていって、また始まっていく。わかってはいても寂しくて、胸が痛む。それは単に、そんな生活が終わってしまうことだけの痛みではない。私の場合、小崎のこともある。あとどのくらいいられるのか。
小崎に風に吹かれてきた枯れ葉を足で踏みながら「ねえ」という。
「何だか寂しいよね」
「寂しいのかよ」
「寂しいよ」
「ふうん」
「だってもう少ししかないじゃない」
興味なければもとから聞かないだろうけど、どうなのだろう。小崎からしてみれば私はただの同級生でしかない。
私から見た小崎はただの同級生なんかではないけれど。